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慢性腎臓病(CKD)の導入と症例提示
#1. 症例報告 慢性腎臓病(CKD) ミント@腎臓内科
#2. 導入 目次 導入 スライドの対象者 慢性腎臓病(CKD)について 症例提示 主な現症 症例 血液検査所見 その他の検査所見 画像検査所見 臨床経過 IgA腎症について まとめ 腎代替療法の基礎知識 本症例のポイント Take home message 症例 まとめ
#3. 導入 症例 このスライドの対象者 医学生 研修医・専攻医 指導医 レポート作成の参考に 基本的な疾患の勉強に レポート・スライド 作成の参考に レポート・スライド 指導の参考に 仮想症例を通じて一緒に勉強していきましょう まとめ
慢性腎臓病(CKD)の定義と重症度分類
#4. 導入 症例 まとめ 慢性腎臓病(CKD)について 定義 ①②のいずれか,または両方が3カ月以上持続することで診断する. ①尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか. 特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要. ②GFR<60 mL/分/1.73 m2 なお GFR は日常診療では血清 Cr 値,性別,年齢から日本人の GFR 推算式を用いて算出する. 男性:推算GFR(eGFRcreat)(mL/分/1.73m2)=194×血清Cr値-1.094×年齢-0.287 女性:推算GFR(eGFRcreat)(mL/分/1.73m2)=194×血清Cr値-1.094×年齢0.287×0.739 ※数ヵ月以上の経過で腎障害が進行し不可逆的となった状態を慢性腎不全(CRF)と呼び, CKDのステージG3以上に相当する. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P2
#5. 導入 症例 まとめ 慢性腎臓病(CKD)について CGA分類(重症度分類) CKDの重症度は死亡,末期腎不全,心血管死亡発症のリスクを緑のステージを基準に黄,橙,赤,の順にステージが 上昇するほどリスクは上昇する. 原疾患 蛋白尿区分 糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日) 尿アルブミン/Cr比(mh/gCr) 高血圧, 腎炎, 多発性嚢胞腎,移 植腎, 不明, その他 GFR区分 (mL/分/1.73m2) 尿蛋白定量(g/日) 尿蛋白/Cr比(g/gCr) G1 正常または高値 ≧90 G2 正常または軽度低下 60~89 G3a 軽度〜中等度低下 45~59 G3b 中等度〜高度低下 30~44 G4 高度低下 15~29 G5 末期腎不全(ESKD) <15 A1 A2 A3 正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿 30未満 30~299 300以上 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿 0.15未満 0.15~0.49 0.50以上 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P3より改変
症例の血液検査成績と入院時現症
#6. 導入 症例 症例:22歳 女性 確定診断名(主な病名および副病名) 1. 慢性腎不全 2. IgA腎症 3. 高血圧 【主訴】 全身倦怠感 【現病歴】 X-9年に尿潜血(3+)尿蛋白(2+), 肉眼的血尿を認め, 腎生検にてIgA腎症と診 断された. ステロイドパルス療法を施行し, 外来にてフォローされていた. X7年腎生検にて組織所見の増悪進行を認め, 再度ステロイドパルス療法を施行 した. 以後, 徐々に腎不全が進行した. X-3年8月には発熱, 下腿浮腫が出現し, 腎生検にて組織所見の増悪(間質・尿細管の萎縮有り, IgA score:10点)を認 めた. 降圧剤内服を開始したが, X年2月には血清Cr:5.7 mg/dLとなり入院と なった. 退院後も徐々に血清Crが上昇し, 今回透析導入目的にて入院となった . 【既往歴】 特記事項なし 【家族歴】 高血圧, 糖尿病, 腎症の家族歴なし まとめ
#7. 導入 主な入院時現症 意識 身長・体重 体温 血圧・脈拍 結膜 清明(JCS-0) 160.5 cm, 53.7 kg 36.5 ℃ 138/98 mmHg, 76 /分 (整) 眼瞼結膜に貧血なし, 眼球結膜に黄疸なし 口腔内 特記すべき異常なし 甲状腺 腫大なし 胸部 聴診上異常なし 腹部 軟・平坦で圧痛なし, 肝脾臓を触知しない 四肢 浮腫なし 症例 まとめ
#8. 導入 症例 まとめ 血液検査成績 血算・凝固 生化学 WBC: 7,260 /μL TP: 7.5 g/dL Ca: 8.3 mg/dL RBC: 335万 /μL Alb: 4.2 g/dL P: 7.4 mg/dL Hb: 9.8 g/dL T-Bil: 0.3 mg/dL Fe: 86 μg/dL Ht: 31.7 % AST: 11 IU/L BUN: 100 mg/dL Plt: 14.4万 /μL ALT: 3 IU/L Cr: 11.32 mg/dL PT: 14.7 sec ALP: 164 IU/L UA: 8.4 mg/dL PT-INR: 1.21 γ-GTP: 11 IU/L HDL-chol: 46 mg/dL APTT: 31.4 CK: 112 IU/L HbA1c: % ChE: 140 IU/L Amy: 189 U/L Na: 143 mEq/L K: 5.6 mEq/L Cl: 106 mEq/L sec 4.6 \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 ・正球性正色素性貧血(赤血球寿命短縮による) ・電解質異常としてNaは→~↓,Ca↓,K↑,P↑ ,Mg↑になりやすい
その他の検査成績と画像検査所見
#9. 導入 その他の検査成績 免疫学的検査 尿検査 CRP: 0.06 mg/dL pH: 6.0 フェリチン: 130.7 ng/dL 尿蛋白: 2+ IgG: 1488 mg/dL 尿糖: IgA: 395 mg/dL 尿潜血: 3+ IgM: 133 mg/dL 尿沈渣 Negative 赤血球: 6-7 /HPF ウイルス学的検査 白血球: 1 /4-5HPF Hbs抗原: Negative 腎上皮: 1 /2-3HPF HCV抗体: Negative 一日尿蛋白量: 1.59 g 尿中蛋白/尿中Cr: 3.59 mg/g-Cr Ccr: 3.02 mL/min 尿化学 糞便検査 便潜血: Negative 便ヘモグロビン: Negative 症例 まとめ
#10. 導入 画像検査所見 心電図 心拍数:62/min, 正常洞調律, 異常所見なし, ST-T変化なし, 左室肥大なし 胸部レントゲン 心胸郭比:41.8%, 胸水 (-) , 大動脈石灰化 (-) 上部消化管内視鏡 局在病変なし 副甲状腺エコー 副甲状腺の腫大なし 症例 まとめ
慢性腎不全の治療経過と透析導入
#11. 導入 症例 治療経過 #1. 慢性腎不全 • 入院時採血より血清 BUN/Cr:100/11.32 mg/dLと高度腎不全状態にあり, 透析療法の必要性が示唆された. • 血液透析のためのシャント造設部位については, 両上肢静脈造影の結果から右肘部とした. • 第2病日に右肘部内シャント造設をおこなった. • 術後シャント血流良好であり, 第15病日より透析導入となった. • 透析導入後明らかな合併症なく, 今後は近医腎臓内科クリニックにて透析の継続を予定している. • 血圧は, 塩酸テモカプリル 2 mg, バルサルタン 80 mgを非透析日内服にて, 120/70 mmHg程度と良好であ り, 第24病日退院となった. まとめ
#12. 導入 臨床経過 バルサルタン 80mg(非透析日内服) 塩酸テモカプリル 2mg (非透析日内服) 138 120 血圧 (mmHg) 98 70 血流良好 内シャント造設 病日 1 2 合併症なし 透析導入 退院 15 24 症例 まとめ
IgA腎症の臨床症状と確定診断
#13. 導入 症例 まとめ IgA腎症 臨床症状 ・大部分の症例は無症候であるが, ときに急性腎炎様の症状を呈することもある ・ネフローゼ症候群の発症は比較的稀である 検査成績 尿異常の診断には3回以上の検尿を必要とし、そのうち2回以上は一般の尿定性試験に加えて尿沈渣の分析もおこなう. ①尿 A. 必発所見: 持続的顕微鏡的血尿 ②血液 なし (尿沈渣で, 赤血球 5~6/HPF以上) B. 頻発所見: 間欠的または持続的蛋白尿 成人の場合, 血清 IgA値 315 mg/dL以上 (全症例の半数以上に認められる) C. 偶発所見: 肉眼的血尿(急性上気道炎あるいは急性 ※上記の①A, ①B, ②Bの3つの所見が認められれば, IgA腎症の可能性が高い. ただし泌尿器科的疾患の鑑別をする必要がある. 消化管感染症後に併発することが多い) IgA腎症診断指針 第3版 P126.
#14. 導入 症例 まとめ IgA腎症 確定診断 腎生検による糸球体の観察が必須である. 光顕所見: 巣状分節性からびまん性全節性(球状)までのメサンギウム増殖性変化が主体であるが, 半 月体, 分節性硬化など多彩な病変がみられる 蛍光抗体法または酸素抗体法所見: びまん性にメサンギウム領域を主体とする IgAの顆粒状沈着. 他の免疫グロブリンと比較し て IgAが優位. 電顕所見: メサンギウム基質内, 特にパラメサンギウム領域を中心とする高電子密度沈着物(electron dense deposit)を認める. IgA腎症診断指針 第3版 P126.
#15. 導入 症例 まとめ IgA腎症 治療アルゴリズム IgA腎症 eGFR≧30 mL/分/1.73m2 尿蛋白量<0.5 g/日 eGFR<30 mL/分/1.73m2 尿蛋白量≧0.5 g/日 組織学的重症度(H-Grade or MEST-C), 血尿の程度, 血圧, 年齢を考慮 薬物療法なし 口蓋扁桃摘出術 <薬物療法> RA系阻害薬 副腎皮質ステロイド薬 <薬物療法> RA系阻害薬 免疫抑制薬 抗血小板薬 n-3系脂肪酸(Fish Oil) 口蓋扁桃摘出術 全ての症例で必要に応じて生活指導(肥満対策/運動/禁煙)と食事療法(減塩など)をおこなう エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020 P45より改変.
IgA腎症の治療アルゴリズムと透析療法
#16. 導入 症例 まとめ IgA腎症 予後 \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 ・腎予後と関連する臨床的因子は主に以下である • 約40%は20年の経過で末期腎不全にいたる. • 約5%は数年以内に透析導入される予後不良群である. 進行性の経過をたどるものの目安 ①高血圧の持続 ②尿蛋白>0.5~1.0g/日 ③診断時の腎機能低下(eGFR<60mL/分/1.73m2) ④硬化や半月体病変を有する糸球体の割合>25% ①不十分な血圧管理 ②尿所見の寛解が見られない 寛解の基準 血尿の寛解:尿潜血反応(ー)~(±)or 尿沈渣赤血球:5/HPF未満 蛋白尿の寛解:尿蛋白定性反応(ー)~(±)or 0.3 g/日(g/gCr)未満 上記の基準を満たした日から6ヶ月以上にわたり2回以上(計3回以上)の検査で基準を満た した場合 エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020 P34-37.
#17. 導入 症例 まとめ 腎代替療法:透析療法 疫学 ・日本の慢性透析患者数は約35万人(2021年末)と年々増加している. ・男性が2/3を占めており、平均年齢は71.09歳で高齢化が進んでいる. ・血液透析患者が 97.2%, 腹膜透析患者が 2.8%である. ・死亡原因の第1位は心不全(22.4%), 第2位は感染症(22.0%), 次いで悪性腫瘍, 脳血管障害. 心血管障害で死亡する割合が高い. 原因 原疾患は多いものから順に 糖尿病性腎症(40.2%:横ばいからやや減少), 腎硬化症(18.2%:増加傾向) 慢性糸球体腎炎(14.2%:減少傾向), 原疾患不明(13.4%:増加傾向) である. 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌55(12):665~723,2022.
#18. 導入 症例 まとめ 腎代替療法:透析療法 原理 ・半透膜を介し血液と透析液が接すると拡散により物質が移動する, 透析現象を利用している. ・半透膜とは, 溶媒や低分子量物質(尿毒素や電解質など)は通過させるが, 高分子量物質(蛋白質や血球成分)は通過させない膜のこと. ・血液透析では陰圧による濾過, 腹膜透析では浸透圧差により除水をおこなう. ・血液透析は人工的に合成された透析膜を, 腹膜透析は自己腹膜を半透膜として利用している. 合併症 血液透析に特有: 不均衡症候群, 低血圧, バスキュラーアクセスに伴う合併症 腹膜透析に特有: 感染性腹膜炎, 被嚢性腹膜硬化症 共通: 動脈硬化に伴う心血管障害, CKDに伴う骨ミネラル代謝異常(腎性骨異栄養症, 二次性副甲状腺機能亢進症など), 透析アミロイドーシス, 貧血, 後天性嚢胞性 腎疾患, 感染症 など イヤーノート2023 内科・外科編 P105, 110.
腎移植の概況と適応基準
#19. 導入 症例 まとめ 腎代替療法:腎移植 概況 ・レシピエントの平均年齢は生体腎が 49.2歳, 献腎が 51.0歳. ・日本では年々, 生体腎移植が増加傾向にある. ・生体腎移植では非血縁間移植, 血液型不適合移植, 高齢者の腎移植が増加している. ・2020年に献腎移植を受けた患者の平均待機年数は16年. ・腎臓の保存時間は肝臓や心臓に比べて長く, 最大48時間までは移植が可能とされている. ・日本移植学会倫理指針では, 生体腎ドナーは親族(6親等内の血族, 配偶者と3親等内の姻族)に限 定されており, その他は倫理委員会の承認が必要. ・手術技術の向上, 免疫抑制剤の開発により生体腎移植, 献腎移植のいずれにおいても生存率, 生着 率 は改善している. ・5年生存率は生体腎で 95%以上, 献腎で 90%以上, 5年生着率は生体腎で 90%以上, 献腎で 85%以上と良好である. 一般社団法人日本移植学会 臓器移植2022ファクトブックP37-45.
#20. 導入 症例 まとめ 腎代替療法:腎移植 適応 腎移植希望者(レシピエント) 腎臓提供者(ドナー) ①末期腎不全患者であること ①以下の疾患または状態を伴わないこととする 透析を続けなければ生命維持が困難であるか, または近い将来に透析に導入する必要に迫られ ている保存期慢性腎不全である ②全身感染症がないこと ③活動性肝炎がないこと ④悪性腫瘍がないこと ・全身性の活動性感染症 ・HIV抗体陽性 ・クロイツフェルト・ヤコブ病 ・悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考え られるものを除く) ②以下の疾患または状態が存在する場合は, 慎重 に適応を決定する ・器質的腎疾患の存在(疾患の治療上の必要か ら摘出されたものは移植の対象から除く) ③腎機能が良好であること 一般社団法人日本移植学会 生体腎移植ガイドライン 平成20年5月18日理事会で承認.
本症例のポイントとTake Home Message
#21. 導入 症例 まとめ 本症例のポイント • 本症例は, IgA腎症より腎不全が進行し, 透析導入となった症例である. IgA腎症患者の40%が腎生 検による診断後, 20年間の経過で末期腎不全へと進行する. 本症例では腎生検により予後比較的不 良群から予後不良群へ移行していることが確認されている. • 今回の入院時の状態では尿毒症による身体症状はあまり強くなかったが, 本人の早期社会復帰希望 が強く, 維持透析の受け入れも十分と考えられたため, 早期導入の適応と考えられた. • 献腎移植患者と移植リスト上の待機患者の予後を比較したコホート研究1では, 腎移植患者の生命 予後は透析患者に比較して有意に延長されていた. この生命予後改善は, 若年者や糖尿病患者, 高 齢レシピエントにおいて特に認められていることを考慮すると移植のメリットは高いと思われる. [1]Wolfe RA, Ashby VB, Milford EL, et al. Comparison of mortality in all patients on dialysis, patients on dialysis awaiting transplantation, and recipients of a first cadaveric transplant. N Engl J Med. 1999;341(23):1725-
#22. 導入 Take Home Message CKDの診断には, ①腎障害を示唆する所見②GFR<60 mL/分/1.73 m2 ①②の片方または両方を満たす状態が3ヶ月以上持続することが必要 IgA腎症における腎予後と関連する因子は, 蛋白尿, 血尿, 高血圧, 腎機能低下 腎代替療法として透析だけでなく腎移植についても, 適応となり得る患 者とその家族に選択肢の一つとして説明する必要がある 症例 まとめ