#4.
1)Okura Y, et al. Circ J. 2008 ; 72 : 489-91. 4 【目的】2055年までの心不全患者数を推定する。【方法】Sado Heart Failure Study(2003)の佐渡市における心不全(左室機能不全)の有病率、国立社会保障・人口問題研究所による将来人口の平成18年12月推計をもとに、 2055年までの心不全患者数を推定した。【リミテーション】佐渡市という特定の地域のデータを用いている点、左室機能障害の有病率が地域住民全体を反映していない可能性がある点、左室機能障害の有病率の今後の変動が不明である点などに限界がある。 心不全は高齢になるほど罹りやすい疾患である
高齢化が進む日本の心不全患者数は人口の1%を占めるといわれている1)。
2035年には日本の心不全患者数が130万人を超えることが指摘され1)、医療のひっ迫を起こす可能性があることから「心不全パンデミック」と呼ばれている。
背景:心不全の疫学 図:日本の推定心不全患者数の推移1)
#5.
1)Shiraishi Y, et al. J Am Heart Assoc. 2018 ; 7 : e008687. [COI] 著者にベーリンガーインゲルハイム社より謝礼等を受領している者が含まれる
2)Ide T, et al. Circ J. 2021 ; 85 : 1438-50. [COI] 著者にベーリンガーインゲルハイム社より謝礼等を受領している者が含まれる
.3)Shiba N, et al. Circ J. 2011 ; 75 : 823-33.
4)Owan TE, et al. New Engl J Med. 2006 ; 355 : 251-9. 図:心不全入院患者における退院後の心血管死および心不全による入院の無イベント生存率(Kaplan-Meier曲線)(JROADHF*)2) 5 急性心不全発症後の予後
日本の急性心不全患者を対象としたレジストリ研究では、急性心不全で入院した患者のうち、退院から1年以内に26%が再入院し、23%が死亡することが示されている1)。
4年後の死亡率も50%を超えており2)、急性心不全発症後の予後は悪い。
CHART研究では、心不全患者の約70%がLVEF(左室駆出率)の保たれた心不全(HFpEF)であると報告されている3)。
米国の大規模コホート研究でも、HFpEFはLVEFが低下した心不全(HFrEF)と同様に生命予後が悪いことが指摘されている4)。 背景:臨床的意義(心不全の予後) 【目的】急性増悪心不全(ADHF)で入院した患者の臨床的特徴と予後を明らかにする。【方法】JROADHF*に登録された、2013年に急性心不全による入院後に退院した患者のうち、長期フォローアップによる診療記録が確認できた11,120例を対象とする。多施設共同後ろ向き観察研究として、JROAD-DPCから抽出した、入院時の患者背景、既往歴、重症度、治療内容と、入院中および2017年12月までの長期フォローアップにて得られた診療記録の分析を行った。
【リミテーション】専門病院に限定されている点、一部の患者で左室駆出率のデータが欠如している点、入院患者に限定されている点などに限界がある。
*JROADHF(Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure):日本循環
#6.
1)Pieske B, et al. Eur Heart J. 2019 ; 40 : 3297. [COI]著者にベーリンガーインゲルハイムよりコンサルタント料等等を受領している者が含まれる
2)Reddy YNV, et al. Circulation. 2018 ; 138 : 861. 既存のHFpEFの評価方法 背景:既存のスクリーニングツール 5点以上:HFpEF
2~4点:運動負荷心エコーまたは侵襲的血行動態測定の実施 AF:心房細動、BNP:B型ナトリウム利尿ペプチド、E/e’:早期充満時の僧帽弁ピーク速度(E)と早期拡張期僧帽弁輪速度(e’)の比、GLS:心筋の長軸方向の収縮機能の指標、HFA-PEFF:心不全協会事前検査評価、心エコー図およびナトリウム利尿ペプチドスコア、不確実な場合の機能検査、最終的な病因、LAVI:左房容積係数、LV:左室、LVMI:左室重量係数、NT-proBNP:N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、PASP:肺動脈収縮期圧、RWT:相対壁厚、SR:洞調律、TR:三尖弁逆流 欧州心臓病学会:HFA-PEFFスコア1) 臨床的特徴によりスコアを算出し、合計スコアに応じてHFpEFの罹患確率が推定できる。 米国心臓協会:H2FPEFスコア2) 【目的】原因不明の呼吸困難を伴う患者において、HFpEFである可能性と追加検査の必要性を判断するために、非侵襲的診断基準を開発・検証する。【方法】2006~2016年にメイヨークリニックで侵襲的運動負荷試験を受けたHFpEF患者267例を含むすべての患者414例を対象に、6つの臨床症候および心エコー所見(肥満、高血圧、心房細動、肺高血圧、高齢、左室充満圧)をもとにHFpEFを診断・評価するH2FPEFスコアを開発し検証した。【リミテーション】対象の24%でNT-proBNPデータが欠損しており最終モデルに影響を与えた可能性がある点、紹介バイアスによりHFpEFの有病率を高くしている可能性がある点などに限界がある。 【目的】HFpEF診断のために利用されているさまざまな所見や併存症、検査値などを統合することで新たな診断アルゴリズムを作成し、コンセンサス・リコメンデーションをアップデートする。【方法】Step 1: Pre-test assessment(初期検査)、Step 2: Ec
#7.
1)Tada A, et al. Int J Cardiol. 2021 ; 342 : 43-48. 既存のスコアはかかりつけ医で用いることが難しい場合がある
既存のスコアでも優れた診断能力でHFpEFの評価ができるが、評価項目に心エコー図検査が含まれ、特にかかりつけ医においては実施することが難しい場合がある。
特に日本においては、かかりつけ医によるスクリーニングが医療連携上重要であるため、より多くの施設で用いることが可能な、より簡便なスコアが求められていた。
背景:既存のスクリーニングツールと課題 H2FPEFスコア、HFA-PEFFスコアの診断精度1) ■HFA-PEFFの合計スコアとサブスコア ■H2FPEFとHFA-PEFFの合計スコア 7 【目的】急性代償不全性心不全で入院した日本人患者におけるHFpEFの診断精度について、HFA-PEFFおよびH2FPEFスコアで評価し、その評価の妥当性について調査を実施。
【方法】全国規模のHFpEF特異的多施設レジストリから、退院時にHFA-PEFFおよびH2FPEFスコアを算出できる急性代償不全性心不全で入院したHFpEF患者(HFpEF群)と、当院で呼吸困難の原因を調べるために心エコーを受けた対照患者(Non-HFpEF群)を調査した。研究対象の集団において、HFA-PEFFおよびH2FPEFスコアを算出し、ROC曲線および曲線下面積(AUC)を用いてこれらのスコアの診断精度を比較した。【リミテーション】サンプルサイズが小さい、選択バイアスの可能性がある点、HFpEF群の33%に心不全既往歴があり、多くの患者が高リスクカテゴリーにある点、global longitudinal strainは利用できなかった点などに限界がある。
#8.
心エコー図検査を必要としないBREATH2スコア1)
日本の診療実態の中で、より多くの医療機関にてHFpEFのスクリーニングを可能にするBREATH2スコアが開発された。
血液検査、胸部X線検査、心電図検査、病歴、年齢にて評価が可能であり、心エコー図検査は不要である。
BREATH2スコア 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた
#9.
BREATH2スコアの評価項目選定のための臨床研究1)
群馬大学医学部附属病院循環器内科にて心不全が疑われる患者622例に対し、運動負荷心エコー図検査を実施し、HFpEFと診断されたHFpEF群283例と、非HFpEF群(対照群)339例の患者背景を基に多変量ロジスティック回帰分析を実施した。
結果
●65歳以上 ●冠動脈疾患 ●NT-proBNP/BNP高値 ●貧血 ●胸部X線による心拡大 ●心電図による左室肥大
以上6項目がHFpEFの独立した予測因子であることが明らかとなった。
BREATH2スコア:評価項目選定の背景 ■HFpEFの独立した予測因子 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた
#10.
1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print. [COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた
2)Pieske B, et al. Eur Heart J. 2019;40:3297. [COI]著者にベーリンガーインゲルハイムよりコンサルタント料等等を受領している者が含まれる
BREATH2スコアの評価項目選定時、独立した予測因子でなかった心房細動をスコアに加えた理由1)
本研究ではHFpEFの診断にHFA-PEFFスコアを用いたが、HFA-PEFFスコアでは洞調律と心房細動で異なる評価基準を設けており、心房細動患者におけるHFpEF患者が診断されにくくなる。これが心房細動が独立した予測因子にならなかった原因であると考えられた。
心房細動自体がHFpEFの発症リスクであることを考慮し、心房細動を評価項目に組み入れた。 BREATH2スコア:評価項目選定の背景(心房細動) 5点以上:HFpEF
2~4点:拡張期負荷試験または侵襲的血行動態測定の実施 ■HFA-PEFFスコア2) AF:心房細動、BNP:B型ナトリウム利尿ペプチド、E/e’:早期充満時の僧帽弁ピーク速度(E)と早期拡張期僧帽弁輪速度(e’)の比、GLS:心筋の長軸方向の収縮機能の指標、HFA-PEFF:心不全協会事前検査評価、心エコー図およびナトリウム利尿ペプチドスコア、不確実な場合の機能検査、最終的な病因、LAVI:左房容積係数、LV:左室、LVMI:左室重量係数、NT-proBNP:N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、PASP:肺動脈収縮期圧、RWT:相対壁厚、SR:洞調律、TR:三尖弁逆流 10
#11.
BREATH2スコアによる診断精度解析1)
ROC曲線による解析の結果、BREATH2スコアはHFpEF群と対照群を明確に区別し(曲線下面積[AUC]0.84)、H2FPEFスコアと比較しても優れた診断能力を示した(AUC 0.84 vs 0.72、Delong法、p<0.0001)。
外部の検証として105例を対象に順天堂大学医学部附属順天堂医院で診断精度を検証し、BREATH2スコアはHFpEF群と対照群を明確に区別し(AUC 0.78)、H2FPEFスコアと比較しても優れた診断能力を示した(AUC 0.78 vs 0.66、Delong法、p=0.02)。
侵襲的血行動態測定によってHFpEFが証明されたコホートでも、BREATH2スコアは妥当な診断能を示した(AUC 0.75、p=0.0001)。
BREATH2スコア:エビデンスとバリデーション ■Derivation cohort
BREATH2スコア vs H2FPEFスコア ■External validation cohort(外部検証)
BREATH2スコア vs H2FPEFスコア 11 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた
#12.
専門医紹介の目安としても活用可能
BREATH2スコアは、その合計点が高いほどHFpEFの可能性も高くなるという特徴があり、4~5点で中程度のリスクであると判断される1)。
BREATH2スコア:合計点とHFpEFの可能性 12 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた
#13.
胸部X線や心電図検査を除いた、より簡便なBREATHスコア1)
胸部X線検査と心電図検査はかかりつけ医では実施できない場合もあり、より簡便なスコアとしてBREATHスコア(BNP高値、高齢者、心房細動、冠動脈疾患、低ヘモグロビン)も開発されている。
BREATHスコアによる診断精度解析1)
ROC曲線による解析では、HFpEF群と対照群を良好に識別した(AUC 0.82、p<0.0001)。
外部検証コホートでも、HFpEF群と対照群を良好に識別した(AUC 0.76、p<0.0001)。
侵襲的血行動態測定によってHFpEFが証明されたコホートでも、BREATHスコアは妥当な診断能を示した(AUC 0.70、p=0.002)。
簡易版BREATHスコアとバリデーション 重み(点数) 合計(0〜7点) ※Brain natriuretic peptide ■BREATHスコア 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3. doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた 13
#14.
14 隠れたHFpEF患者を顕在化するために
かかりつけ医のスクリーニングが非常に重要である。
より簡便に用いることが可能なスクリーニングツールが広く普及する必要がある。
BREATH2スコアは優れた診断能力を示し、既存のスコアよりも簡便に用いることが可能1)。
当スコアを足がかりに、心不全治療の病診連携・地域連携を強化していくことが望まれる。
心不全早期発見のための病診連携・地域連携に向けて 1)Saito Y, et al. J Cardiol. 2025 Apr 3.
doi: 10.1016/j.jjcc.2025.03.018. Epub ahead of print.
[COI]本試験はベーリンガーインゲルハイムの支援により行われた