#4.
検査の基本:要点まとめ 検査固有の感度・特異度(縦方向の割合)と、医師の知りたい的中率(横方向の割合)とでは軸が異なる。
的中率(横方向の割合)は、「事前確率」や対象集団の「罹患率」に大きく左右される。
よって、的中率を高めるには「どの」検査をするかだけでなく「誰に」検査をするかが重要となる。
「事前確率」を最も上げ下げするのは、丁寧な問診である。
#5.
RT-PCR検査の対象者は?
#6.
RT-PCR検査対象は?米国CDCによるPUI(Person Under Investigation)の定義 *濃厚接触歴とは
COVID-19患者の約2m以内に長期間滞在(COVID患者のケア、患者との同居、訪問、医療機関の待合室または部屋を共有)
(咳をされるなど)COVID-19患者の感染性分泌物と直接的接触
ただし、推奨された個人防護具をつけていなかった場合に適用される https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3
#7.
感染流行地域(米国CDC) 持続的な市中感染が生じている場所
最低でもLevel 2 Travel Health Noticeが出ている国(2/29/2020現在)
中国 (Level 3 Travel Health Notice)
イラン (Level 3 Travel Health Notice)
イタリア (Level 3 Travel Health Notice)
韓国 (Level 3 Travel Health Notice)
日本 (Level 2 Travel Health Notice)
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3 ※一部地域では、レベル4になっています。
#8.
厚生労働省の指針(米国のPUIに加えて) 37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、入院を要する肺炎が疑われる者(特に高齢者又は基礎疾患があるものについては、積極的に考慮する)
医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う者
→季節性インフルエンザ検査などの他の病原体検査を提出し陰性の場合、または陽性でも治療開始後症状増悪時に考慮 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596426.pdf 検査対象は、各国、地域の流行状況によって異なる
#9.
どこから検体を採取する?
#10.
PUIに対する検査の推奨内容(米国CDC) SARS-CoV-2の初期の診断的検査として、CDCは上気道(鼻咽頭AND口咽頭)の標本を回収し、RT-PCRに提出することを推奨。
入手可能なら、下気道の標本の検査も推奨。湿性咳嗽のある患者では、喀痰を採取し、検査すべき。
ただし、喀痰誘発は推奨されない。
気管挿管をされている患者など、臨床的に適応となる場合には下気道からの吸引やBALによる標本回収も行うべきである。発症時期にかかわらず、PUIと判明した時点ですぐに採取を行うべきである。 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3
#11.
検体の採取(国立感染研) 「現行の病原体検査(PCR)では下記の2検体を検査します。下気道にウイルス量が多いことが報告されていますので、なるべく喀痰などの下気道由来検体の採取をお願いします。痰が出ないなど、下気道由来検体の採取が難しい場合は鼻咽頭ぬぐい液のみで構いません。 」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9325-manual.html
#12.
ECDC(欧州CDC)の推奨より追加事項 2019 nCoVに対しては、強い疫学的ないし臨床的な疑いがある患者では、1回の「陰性」結果は、2回目の異なる遺伝子をターゲットにしたRT-PCRか、2回目の異なる解剖学的場所から取られたサンプルでの検査で再確認する必要がある。
下気道感染を起こしうる他の病原体の共感染も否定し得ないため、強い疑いの患者に対しては、他の病原体についても丁寧な原因検索を行うべきである。 https://www.ecdc.europa.eu/en/factsheet-health-professionals-coronaviruses
#13.
検体採取箇所に関する報告 18症例の上気道検体のウィルス量をモニタリング
喉よりも鼻からより高いウィルス量が検出される傾向にあった。
無症状(ないし軽症状)患者と症状のある患者ではウィルス量に大きな差はなかった。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2001737
#14.
採取した検体をどうする?
#15.
採取した検体は? 清潔な漏れのない容器に入れて、2-8℃で冷蔵する。 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/lab/guidelines-clinical-specimens.html
#16.
検査の感度・特異度は?
#17.
RT-PCRの感度は低い? 不適切な検体採取、運搬、取り扱いによって、ウィルス量が不十分な場合には、偽陰性が生じうる。(米国CDC)
もしCOVID-19を強く疑っている患者で初期の検査が陰性だったら、鼻、喀痰、気管内吸引などの複数箇所から標本を採取し、再検査を行うべきである。(WHO)
初期の検査で陰性が出た後、後日陽性反応がでるケースが相次いで報告されている1)。中国では、7回目の検査で初めて陽性と報告されたケースも報道されている2)。 https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020200343
https://mp.weixin.qq.com/s/RpXRE8Ow5nHeaLhxIEr-Ng
#18.
RT-PCRの感度は、CTに劣る? COVID-19疑いの1014例のコホートでは、RT-PCRと特徴的CT所見(両側すりガラス影を主体としたウィルス肺炎像)の陽性率は、各々59%(601/1014)、88%(888/1014)であった。
RT-PCRをreferenceとして、胸部CT所見の感度は97%(580/601)であった。RT-PCRが陰性で、CT所見が陽性だった患者(308例)のうち、48%(147例)が可能性の高い症例と再考され、33%(103例)が総合評価によりprobable caseとされた。
(RT-PCRをreferenceとした)
COVID-19に対する胸部CT所見の感度・特異度は、97%・25%
https://doi.org/10.1148/radiol.2020200642
#19.
COVID-19のCT所見 81症例を解析した研究で優位に見られた所見
両側性:79%
末梢性:54%
境界不明瞭:81%
すりガラス影:65%
片側性→両側性、びまん性に進展 https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30086-4/fulltext
#20.
RT-PCRは特異度に優れた検査 MERS-CoV、他HCoV4種類、インフルエンザウィルスを含む多種の病原体を含む患者からのサンプル297例でRT-PCR検査を行った結果、偽陽性は0件だった。
4例で初期に弱い反応が見られたが、再検査で陰性となった。コンタミネーションなど検体の取り扱いに問題があった可能性が指摘されている。
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045
#21.
感度・特異度まとめ COVID-19に対するRT-PCR検査は感度が低く、特異度は高い
→RT-PCRは感染の診断に有用だが、否定に用いるのは不適切
COVID-19(肺炎)に対する胸部CT検査は感度が高く、特異度は低い
→胸部CT検査は、COVID-19の否定に有用かもしれないが、感染の診断に用いるのは不適切(ただし、CT室を介した感染リスクにも留意)
#22.
検査の費用は?
#23.
RT-PCR検査費用(保険適用となった場合) 「1万8000円程度」
自己負担(3割の場合):5400円
大学病院などで検査した場合:1万3500円(自己負担4050円)
「厚労省は、当面は補助金を活用するなどして、患者の負担をできるだけ減らす仕組みを検討」
臨床医として提出する検査がどのぐらいの規模の公的資金を用いるのか知っておくことも重要である。 https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000177579.html
#24.
その他
#25.
ウィルスが検出される時期は? ウィルスは発症1-2日前から検出されうる。
中等症例では、7-12日間、重症例では2週間まで持続。
ウィルスのRNAは、30%の症例で発症5日後から便中にも検出されるようになり、中等症例では4-5週間まで持続する。しかし、どこまで感染力があるかは不明で、便口感染の役割もまだ十分理解されていない。 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf
#26.
他の病原体検査の重要性 米国CDCからのCOVID-19が疑われた210例の有症候者の報告で、nCoV陽性例は11例に止まり、30例で他の病原体検査が陽性であった。
「他の病原体」にはインフルエンザやRSウィルスが含まれた。 https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6906e1.htm?s_cid=mm6906e1_w
#27.
開発中の検査 ウィルスのIgM, IgG, IgM + IgGを測定する血清学的検査も現在開発中である。 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf
#28.
Take Home Message 検査の的中率を高めるには「誰に」検査をするかが重要となる。
正確な診断のためには、あらゆる疾患の診療と同様、丁寧な情報収集が重要であるということを肝に銘じる。
COVID-19に対するRT-PCRは特異度は高いものの、感度は限定的。
感度を上げるため、複数箇所から検体を採取する。また、「検査陰性」を用いた疾患の否定はできないことに注意。
胸部CT検査はCOVID-19肺炎に対して感度が高いものの、特異度は低い。