テキスト全文
パーキンソン病の基礎知識と重要性
#1. Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital Let’s suspect PD and refer to the Specialist. 自分で
パーキンソン病を疑い、
紹介しよう!
#2. Introduction パーキンソン病(PD)は神経変性疾患の中では有病率が高く、
全年齢では1000人に1人の疾患です。
より高齢であればあるほどで高頻度となり、
65歳以上では、100人に1人とされています。
また、L-DOPA投与により、ADLの改善も期待されることから、
診断をつけ、治療に結びつけることは非常に重要です。
このスライドは、
1.診断において、PDの知っておくべき知識を学ぶ
2.どうやってPDを疑い、紹介までつなげるか?
について、具体的行動と知識を学ぶために作成しています。
非運動症状の理解と診断のヒント
#4. パーキンソン病発症から15年までは、一般人口の生存率と同様である。それ以降は低くなる。
治療開始後、5年間程度は比較的経過よく、それ以降で薬の効きにくさなど問題が出現してくる。10年経過しても、ADLが自立できている患者さんもいる。15年経過すると、介助を要する割合が高くなる。
症状経過には個人差があり、同様ではないのは知っておく必要がある。特に高齢発症の場合には、上記経過の限りではない。→投薬の効果について、症状進行についても、個別でそれぞれである側面もある。 ①パーキンソン病の経過について
ある程度知ろう。
予後、ADL自立維持可能期間、個人差について。
#5. パーキンソン病の運動症状が出現する前に、前駆して出現している非運動症状がある。
病歴聴取には、これらを確認すると、診断の参考になりうる。
便秘症 :特異度は低いが、合併多い。
レム睡眠行動障害 :これは前駆症状としてかなり重要。後述あり。
うつ症状 :正確な評価は難しいが、確認してみること。
嗅覚異常 :これは重要だが、問診のみでは判断できないことが多い。
これらに加えて、排尿障害も多く認められる。多様な訴えにより、色々な科を受診する場合もある。これを頭の中に入れておくことも必要。 ②運動症状以外の症状が大切。
非運動症状(Non-motor symptoms)について知ろう。
これが診断のヒントにもなる。
疑った時には一通り確認してみよう。
#6. レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder:RBD)は、パーキンソン病の運動症状が出現する前に存在する、前駆症状の一つです。PD患者の30-50%で認められます。RBDは睡眠中に出現する症状で、REM睡眠期に夢(悪夢が多い)と一致して出現する激しい異常行動とされます。家人からの聴取が必要です。RBDの異常行動は、夢が具現化した結果、同床者に対して殴る、蹴るなどの暴力行動を示す場合もあります。異常行動とともに大きな声を出したり、寝言も多いです。以下のように質問して、RBDを確認してみてください。
「(本人には)怖い夢は見ますか?(家人には)夜中に大声を出したりすることはありますか?寝言は?バタバタし、手足を動かすことはありますか?」 RBDをどのように
聞いたらいいか?
レビー小体型認知症とPDの関係
#7. パーキンソン病は、病期の進行により認知機能障害を合併しうる。認知機能障害が病初期から目立つ場合に、レビー小体型認知症(DLB)という病名が使われる。パーキンソン病とDLBは、同一スペクトラムにある疾患ととらえる。DLBはパーキンソン病とは異なり、運動症状が目立たない場合もある。注意点は、投薬アプローチは同一ではない点であり、同様には扱えないこと。DLBでは薬剤過敏性、という特徴もある。
患者/家族説明には、シンプルに、以下のようにお話しています。
「DLBとはパーキンソン病の認知症と考えてよいです。
ただし、投薬治療はPDとは異なります。投薬介入の難しさもあります。」 ③レビー小体型認知症(DLB)。
DLBについて、説明できるようになろう。
PDとDLBは同一疾患スペクトラムにある。
#8. 先述の通り、抗パーキンソン病薬での治療についての反応性は個人差がある。必ずしもすべてのPD患者が、治療によりADLの劇的な改善が得られる訳ではない。
ただし、PDは投薬による運動症状改善が見込め、きちんと診断され治療を受けるメリットが大きい疾患である。なるべく、診断とともに治療されるべき疾患の一つであることを再認識しよう。きちんと専門医へ紹介し、PD診断に至った場合には、それは患者さんにとって非常に意味のあることであることを知ろう。 ④PDとして診断がつく重要性を再確認。
もちろん診断がつくことも大切だが、
投薬治療の有効性が期待できる。
#10. 先述の通り、「運動症状に前駆する非運動症状の聴取」が参考になる。便秘症、RBD、うつ症状、嗅覚異常の有無について聴取しよう。また、排尿障害(過活動膀胱症状、夜間頻尿)の合併も多く、合わせて聴取する。RBDの存在が確認できると、PD診断に自信が持てる。運動症状が顕在化するのは黒質の神経細胞変性が50%進行してから、と考えられており、これらの非運動症状は運動症状よりも先に出現しうる前駆症状として捉えられている。便秘で内科、排尿障害で泌尿器科へ既に通院していることも多く、初診時の内服薬も参考になる。精神科や心療内科への受診歴もありうる。歩行障害や姿勢異常、腰の痛みで整形外科へも受診する。様々な診療科の医師がみる可能性がある疾患であることも再認識する必要がある。 非運動症状の
キーワードで
診断の参考に
パーキンソン病の診察手順
#12. 振戦(Tremor)、無動(Akinesia)、筋強剛(Rigidity)、歩行障害 をそれぞれ確認。
Tremor 安静時振戦。膝の上に手を置いて、ふるえをみる。
Akinesia 指タップ(親指・人指をパチパチ)、
グーパー(手の開閉) をしてもらう。
動きの遅さ、ぎこちなさをみる。
Rigidity 肘関節の固さを他動的に動かしてみて、確認。
歩行 歩行の遅さを確認。小刻み歩行かどうかもみる。
Akinesiaを含むその他症状があることがパーキンソニズムの要件である。 パーキンソン病症状の診察手順。
Tremor → Akinesia → Rigidity → 歩行
の手順で診察してみましょう。
Akinesiaの存在に注目しよう。
画像検査の重要性と手法
#14. ①[運動障害がパーキンソニズムであるかどうか]、が最初の議論、
②[パーキンソニズムがパーキンソン病によるかどうか]、が次の議論です。
画像検査の特徴は、
①を評価できる→DaT-scan ②を評価できる→MRI、MIBG
上記で使い分けをします。紹介時には頭部MRIをオーダーお願いします。
PDでは脳萎縮は目立たないことになっており、他のパーキンソニズムを来たす疾患では、脳萎縮が起こりうることが特徴です。矢状断の撮像条件を入れてください。 頭部MRIをオーダーして紹介してくれると
専門外来では嬉しいです。
MIBG心筋シンチグラフィ、DaT-scanの適応は
専門外来で検討します。
#15. DAT 疾患が、パーキンニズムを来たしうる疾患(パーキンソン症候群)かどうかがわかる検査。 DaT-scan MRI パーキンソニズムを来たしうる疾患で脳萎縮が目立たないのがPD。脳萎縮が目立つのがその他の疾患。 頭部MRI MI
BG パーキンソニズムの存在はわかっているが、それがパーキンソン病によるかどうかがわかる検査。 MIBG心筋シンチグラフィ 画像検査まとめ 可能であれば、T1強調矢状断を追加した一般MRI検査を、紹介前にオーダーお願いします。矢状断画像では、MSAやPSPをみるために、脳幹・小脳萎縮を評価します。
非運動症状の聴取と診察実践
#17. 典型的な運動症状以外に、非運動症状がありうる。便秘、排尿障害、うつ症状、RBD。その他自律神経障害による失神症状も。姿勢障害(前傾姿勢)もある。また、痛みの訴えが目立つこともあり、腰部・下肢の痛みの頻度も多い。体重減少も多い。診断がつかず、いろいろな診療科を回っている患者がいる。また、前駆症状により、特定の専門外来に既に通院しているPD患者も存在しうる。
自分の目の前の患者さんで、『運動症状に加えて、多様な症状があった場合』には、これらの非運動症状のキーワードでPDを想起する。
また、これら非運動症状については、ピンポイントで聴取してみること。 非運動症状の
キーワードで
思い出すこと。
#18. 自分で診察
してみよう。 先ほどの、ミニマムな診察を実践してみよう。
Tremor(膝の上に手をおいて、安静時振戦の確認)
Akinesia(指タップ+グーパーで緩慢さがないか、ぎこちなさがないか)
Rigidity(肘関節の固さをみてみよう)
歩行(歩いてもらって、歩行の遅さを確認しよう)
また、重要な注目ポイントは、「所見の左右差がある」ことである。
左右差があると、パーキンソン病らしいので、ここでは是非注目してほしい。
専門医への紹介と診断の意義
#19. MRIオーダー、
紹介。 T1強調画像矢状断を追加したMRI検査をオーダーして、専門医へ紹介。
MRIのみで十分です。
MRIではPDでは脳萎縮が目立たない、ことを確認するために行います。
MIBG心筋シンチグラフィとDaT-scanの検査の意味は、
大まかに理解していただければよいと思います。
現在のPDの診断基準(MDS)には、これら画像検査の施行が含まれています。この二つの検査は、専門医が状況に合わせて使い分けてオーダーしています。
#20. もう一度、
診断の意義に
ついて。 パーキンソン病であるならば、投薬による運動症状の改善が期待できます。パーキンソン病が疑われる場合には、是非、専門医へつなげられるようにしてください。
結局、他のパーキンソニズムを来たす疾患の可能性もあり得ます。これらは現状では有効な治療アプローチがない疾患ではありますが、きちんと専門医の評価を受けて、方針について相談できることは、患者QOLを変えうることです。専門医でも判断がつけにくいパーキンソニズム症例もあります。診断の難しい領域であることも言及しておきます。
#21. 比較的遭遇する可能性のある疾患で、ともすると診断されずに
よくわからないままで経過される患者さんも時におられます。
もちろんPDを疑うところから、診療はスタートします。
疑うための予備知識と、紹介までのプロセスを
本スライドでは解説しました。
治療の甲斐のある疾患ですので、
きちんと紹介して、患者さんのQOL向上につながると、
とても素晴らしいと思います。是非実践してみて下さい。 TAKE HOME MESSAGE!