#4.
4 2023年改訂版ステートメントの概要
#5.
BNP/NT-proBNPについて 5 BNP/NT-proBNPの構造模式図 BNP遺伝子から転写・翻訳されたBNP前駆体が生成され、そこから生理的に非活性のNT-proBNPと、生理活性を有する成熟型BNPに切断される。
主として心室にて壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し、速やかに生成・分泌されるため、壁応力が増大する心不全ではその重症度に応じて血中濃度が増加する。心筋へのストレス以外にも、血中濃度に影響を与える因子がある(例:腎機能の低下に合わせて血中濃度が上昇する)。
高齢者ではいずれも高い値を、肥満者ではいずれも低い値を示す傾向にある。
BNPの測定には血漿を用い、NT-proBNPの測定には血清または血漿を用いる。 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#6.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値(1/5) 6 【基準値】
BNP≦18.4 pg/mL
NT-proBNP≦55 pg/mL
BNPの基準値は2013年版同様に18.4pg/mL、これに相当するNT-proBNP値は55pg/mLである。
この値より低い場合には、潜在的な心不全の可能性は極めて低いと判断される。 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全~心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#7.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値(2/5) 7 【心不全の可能性は低い】
18.4<BNP<35 pg/mL
55<NT-proBNP<125 pg/mL
心不全の危険因子を有している症例でも、直ちに治療が必要となる心不全の可能性は低いと判断される。
BNP/NT-proBNPだけでは心不全の程度を過小評価して しまう場合(収縮性心膜炎、僧帽弁狭窄症、発作的に生じる不整脈、一部の虚血性心疾患、高度肥満などを伴う心不全)もあり、心不全症状/徴候を十分に考慮し判断する必要がある。 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全~心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#8.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値(3/5) 8 【前心不全-心不全の可能性がある】
35≦BNP<100 pg/mL
125≦NT-proBNP<300 pg/mL
構造的および/あるいは機能的な心臓の障害が存在するものの労作時息切れ、全身倦怠感、浮腫などの症状を認めない前心不全、または症状を認める心不全の可能性がある。
心不全の危険因子を有する症例では、胸部X線、心電図、心エコー図検査を実施する。対応が難しい場合は循環器専門医に紹介する。 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全~心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#9.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値(4/5) 9 【心不全の可能性が高い】
100≦BNP<200 pg/mL
300≦NT-proBNP<900 pg/mL
心不全である可能性が高く心エコー図検査を含む心機能評価を早期に実施し、原因検索が必要である。
最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療を開始し、対応が難しい場合は循環器専門医に紹介する。 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全~心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#10.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値(5/5) 10 【高リスク心不全の可能性が高い】
BNP≧200 pg/mL
NT-proBNP≧900 pg/mL
近い将来に心不全悪化による緊急入院や死亡などのイベントが生じうる高リスク心不全の可能性が高く、原因検索を行い、速やかに最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療を開始する。
対応が難しい場合は循環器専門医に紹介する。 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全~心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#11.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療) *日本循環器学会、日本心不全学会。急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版、p79、図11参照。
†最新の心不全診療ガイドラインに準じて左室駆出率に応じた標準治療薬。血圧、心拍数、腎機能、電解質(特にカリウム値)に応じて忍容性がある限り目標用量まで増量する。
‡利尿薬はループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬、炭酸脱水酵素阻害薬、浸透圧利尿薬を指す。 11 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024) 慢性心不全においては過去のBNP/NT-proBNP値を参照しつつ、個々の症例に最適なBNP/NT-proBNP値を見つけ、その値を目標として、定期的に測定をし心不全管理を行うべきである。
前回に較べてBNPが40%以上、NT-proBNPが30%以上上昇した時には、心不全の増悪の可能性を考慮し、その原因を探索し、早期介入することが必要である(下図参照)。 <前回値との比較> 利尿薬‡ BNP/NT-proBNP変化率 標準治療薬(β遮断薬以外)† β遮断薬† 急性心不全に対する初期対応から
急性期対応のフローチャート* 改善 悪化 急性増悪 導入または最大用量を目指し増量 導入または最大用量を目指し増量 増量を見合わせる 用量の調節・うっ血解除
(増量・多剤併用を検討) 用量の調節
(減量・中止を検討) 心不全管理においてはBNP/NT-proBNP値を参考に最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療薬の強化を含めた適切な治療介入、生活習慣の是正(禁煙、断酒、減塩、食事や運動の適正化など)、多職種による介入などを含めた包括的な疾病管理が重要である。
#12.
改訂のポイントおよびエビデンス 12 1)ARNI使用時の留意点の追記
2)BNPのカットオフ値の変更
3)BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)の追記 ステートメント改訂の主なポイントは、以下の3点である。
#13.
改訂のポイント1)ARNI使用時の留意点の追記 13 ARNI導入時のBNP値の解釈への注意喚起がなされた。 また近年使用されるようになった心不全治療薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は1分子中に ARB のバルサルタンとネプリライシン阻害薬のプロドラッグであるサクビトリル(AHU-377)を1:1で結合含有させた化合物である。ARNIはネプリライシンの作用を阻害することで、BNPを含むナトリウム利尿ペプチドの分解を抑制する。そのためARNI導入時には内因性のBNPが一時的(使用開始後8〜10週目ぐらいまで)に上昇するため、BNP値の解釈に注意が必要である6, 7)。一方で、ARNI投与8〜10週経過後でのBNP/NT-proBNP値の上昇は予後不良と関連しており、ARNI使用中の心不全患者の慢性期管理においてはBNP/NT-proBNPはともに有用である8)。 (日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 本文より抜粋) 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#14.
改訂の根拠となったエビデンス1)ARNI使用時の留意点の追記 Myhre PL, et al. J Am Coll Cardiol. 2019 ; 73 : 1264. [COI]著者にベーリンガーインゲルハイムよりアドバイザリーボード料等を受領している者が含まれる。 14 ARNI使用開始後、8~10週目ごろまではBNP値が一時的に上昇する。
一方で、8~10週経過後のBNP/NT-proBNP値の上昇は予後不良と関連しており、心不全の診断基準として 有用である。 ARNI投与初期のBNP値の一過性上昇 ARNI投与維持期(8~10週後)の
BNP/NT-proBNP値別の予後 サクビトリルバルサルタン8~10週投与後
(V7、サクビトリルバルサルタン群のみ、n=994) スピアマンの順位相関係数:0.75 【目的】ARNI投与前および投与中のBNP測定値の予後予測能を明らかにする。【方法】PARADIGM-HF試験における、心不全患者(NYHA心機能分類Ⅱ以上、左室駆出率40%以下)8,442例を対象に、 ARNI投与前後のBNP値およびNT-proBNP値より、ナトリウム利尿ペプチド(NP)レベルとその後の心血管死または心不全による入院のリスクとの関連を評価した。【リミテーション】解析対象を心血管リスク因子をより多く有するNP測定可能な患者群に限定した点、投与時の血液サンプル数が限られており薬剤投与開始前のNP測定値を用いた点などに限界がある。
#15.
BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療) *日本循環器学会、日本心不全学会。急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版、p79、図11参照。
†最新の心不全診療ガイドラインに準じて左室駆出率に応じた標準治療薬。血圧、心拍数、腎機能、電解質(特にカリウム値)に応じて忍容性がある限り目標用量まで増量する。
‡利尿薬はループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬、炭酸脱水酵素阻害薬、浸透圧利尿薬を指す。 15 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024) 慢性心不全においては過去のBNP/NT-proBNP値を参照しつつ、個々の症例に最適なBNP/NT-proBNP値を見つけ、その値を目標として、定期的に測定をし心不全管理を行うべきである。
前回に較べてBNPが40%以上、NT-proBNPが30%以上上昇した時には、心不全の増悪の可能性を考慮し、その原因を探索し、早期介入することが必要である(下図参照)。 <前回値との比較> 利尿薬‡ BNP/NT-proBNP変化率 標準治療薬(β遮断薬以外)† β遮断薬† 急性心不全に対する初期対応から
急性期対応のフローチャート* 改善 悪化 急性増悪 導入または最大用量を目指し増量 導入または最大用量を目指し増量 増量を見合わせる 用量の調節・うっ血解除
(増量・多剤併用を検討) 用量の調節
(減量・中止を検討) 心不全管理においてはBNP/NT-proBNP値を参考に最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療薬の強化を含めた適切な治療介入、生活習慣の是正(禁煙、断酒、減塩、食事や運動の適正化など)、多職種による介入などを含めた包括的な疾病管理が重要である。
#16.
改訂のポイント2)BNPのカットオフ値の変更 16 1)心不全の可能性があるBNPのカットオフ値の変更:BNP 40→35(pg/mL)へ変更した。
2)BNP値100pg/mLに対応するNT-proBNPカットオフ値の変更:NT-proBNP 400→300(pg/mL)へ変更した。
3) 心不全診断や循環器専門医への紹介基準の変更:
BNP 100→35 (pg/mL) /NT-proBNP 400→125 (pg/mL)に変更した。
治療対象となる心不全の可能性があるので
精査あるいは専門医に紹介 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが、可能ならば経過観察 治療対象となる心不全の可能性が高いので
精査あるいは専門医に紹介 BNP NT-proBNP 0 18.4 40 100 200 (pg/mL) 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察 前心不全(心臓機能障害があるが心不全症状/徴候がない)、または心不全の可能性がある 心不全の可能性が高い 近い将来に心不全悪化による入院などの
必要性が生じる高リスク心不全である可能性が高い 前心不全 ~ 心不全 心不全 高リスク心不全 精査または循環器専門医に紹介 BNP NT-proBNP 軽度の心不全の可能性があるので精査、経過観察 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#17.
改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ①前心不全、または心不全の可能性があるBNPのカットオフ値の変更(1/2) Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022 ; 145 : e876. 17 AHA/ACC/HFSAガイドラインにおける器質的心疾患の閾値 国際的なスタンダード(AHA/ACC/HFSAガイドライン)において、器質的心疾患(前心不全~心不全)の可能性があると考える基準値として「BNP≧35pg/mL」が挙げられている。 変更点:BNP 40→35(pg/mL)へ変更した。
#18.
改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ①前心不全、または心不全の可能性があるBNPのカットオフ値の変更(2/2) Redfield MM, et al. Circulation. 2004 ; 109 : 3176-81. 18 BNPを用いた前臨床拡張機能障害の検出:スクリーニングの意義 前臨床的拡張機能障害の検出のためのBNP基準値を36.4pg/mLとした場合、感度75%、特異度69%であった。 変更点:BNP 40→35(pg/mL)へ変更した。 【目的】血漿中BNPの前臨床拡張機能障害のバイオマーカーとしての有用性を評価し、識別値の年齢および性別による変化を検討する。【方法】Rochester疫学プロジェクトに参加する45歳以上の住民2,042例を対象に、BNP、心室機能、臨床パラメータを測定し、ROC解析によりBNPの収縮・拡張機能障害に対する予測精度を評価した。【リミテーション】BNPは軽度の収縮・拡張機能障害の検出に対して感度と特異性が低い点、BNPのカットオフ値が年齢により異なるため標準化が必要である点などに限界がある。
#19.
国際的なスタンダード(JHFS/HFSA/ESC心不全国際定義)において、入院患者の心不全診断基準値としてBNP≧100pg/mLとともにNT-proBNP≧300pg/mLが示されている。
ただし、BNPとNT-proBNPとの換算を検討した本邦のデータからはNT-proBNP 300pg/mLに相当するBNP値は60~75pg/mLと若干低値な可能性もあり、今後の検討課題である。 改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ②BNP値100pg/mLに対応するNT-proBNPカットオフ値の変更 Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2021; 27 : 387.日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024) 19 変更点:NT-proBNP 400→300(pg/mL)へ変更した。 心不全診断におけるBNP/NT-proBNPの基準値
#20.
NT-proBNP≧125pg/mLでは、心不全の新規発症リスクが上昇する。 改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ③心不全診断や循環器専門医への紹介基準の変更(1/3) 20 変更点:BNP 100→35(pg/mL)/NT-proBNP 400→125(pg/mL)に変更した。 Myhre PL, et al. JAMA Cardiol. 2022 ; 7 : 623. [COI]著者にベーリンガーインゲルハイムより謝金を受領している者が含まれる。 p<0.001 p<0.001 後期高齢者(5回目受診時、平均76歳) NT-proBNP値≧125の心不全新規発症リスク 5年発症率 中年期(2回目受診時、平均57歳) NT-proBNP (pg/mL) 黒人男性 白人男性 黒人女性 白人女性 NT-proBNP(pg/mL) 5年発症率 【目的】NT-proBNP値の性別および人種間の差が、既知の生理学的要因で説明可能かどうかを検証し、これらの人口統計学的サブグループにおけるNT-proBNP値を用いた心不全リスクの一貫した予測可能性を評価する。【方法】縦断的な疫学的前向き地域コホート研究であるARIC研究において1987~1989年に米国の4地域で登録された男女15,792例のうち、中年期(2回目受診時、1990~1992年)12,750例および後期高齢期(5回目受診時、2011~2013年)5,191例を対象に、性別および人種に基づくNT-proBNP値と心不全リスクをCox回帰およびPoisson回帰で分析した。【リミテーション】参加率が低い点、地域コホートを一般化するには制約がある点、生物学的に活性なナトリウム利尿ペプチドの測定を実施していない点などに限界がある。
#21.
国際的なスタンダード(JHFS/HFSA/ESC心不全国際定義)において、外来患者の心不全診断基準値としてBNP≧35pg/mL、NT-proBNP≧125pg/mLが用いられている。 改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ③心不全診断や循環器専門医への紹介基準の変更(2/3) Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2021; 27 : 387. 21 変更点:BNP 100→35(pg/mL)/NT-proBNP 400→125(pg/mL)に変更した。 心不全診断におけるBNP/NT-proBNPの基準値
#22.
NT-proBNP≧125pg/mLを基準値とすることで、HFpEF(左室駆出率≧50%)を88%検出することができる。 改訂の根拠となったエビデンス2)BNPのカットオフ値の変更 ③心不全診断や循環器専門医への紹介基準の変更(3/3) Nogi K, et al. J Cardiol. 2023 ; 82 : 481. [COI]著者にベーリンガーインゲルハイムより研究費等を受領している者が含まれる。 22 変更点:BNP 100→35(pg/mL)/NT-proBNP 400→125(pg/mL)に変更した。 NT-proBNP 125≧pg/mLの患者の心エコーデータにおける構造的心疾患の割合 EF:左室収縮能 【目的】心不全リスクがある患者や前心不全患者における早期診断が可能となるNT-proBNP≧125pg/mLを予測する新たなスコアリングシステムを開発する。【方法】日本国内2つの前心不全レジストリから収集したデータを用い、後ろ向きおよび前向きコホート研究でスコアリングモデルの構築と外部検証を実施した。【リミテーション】選択バイアスの可能性がある点、対象が65歳以上に限定されている点、BMIや心胸郭比(CTR)など地域差が影響する要因が含まれている点などに限界がある。
#23.
改訂のポイント3)BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)の追記 *日本循環器学会、日本心不全学会。急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版、p79、図11参照。
†最新の心不全診療ガイドラインに準じて左室駆出率に応じた標準治療薬。血圧、心拍数、腎機能、電解質(特にカリウム値)に応じて忍容性がある限り目標用量まで増量する。
‡利尿薬はループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬、炭酸脱水酵素阻害薬、浸透圧利尿薬を指す。 23 1. Stienen S, et al. Circulation. 2018 ; 137 : 1671. 2. Felker GM, et al. JAMA. 2017 ; 318 : 713.[COI]著者にベーリンガーインゲルハイムより謝金を受領している者が含まれる。3. McLellan J, et al. BMJ Evid Based Med. 2020 ; 25 : 33-7. 4. Stienen S, et al. Eur J Heart Fail. 2015 ; 17 : 936.[COI]著者にベーリンガーインゲルハイムよりコンサルタント料を受領している者が含まれる。5. 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023. http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024) <前回値との比較> 利尿薬‡ BNP/NT-proBNP変化率 標準治療薬(β遮断薬以外)† β遮断薬† 急性心不全に対する初期対応から
急性期対応のフローチャート* 改善 悪化 急性増悪 導入または最大用量を目指し増量 導入または最大用量を目指し増量 増量を見合わせる 用量の調節・うっ血解除
(増量・多剤併用を検討) 用量の調節
(減量・中止を検討) 2013年版では、ガイド下治療が心不全再入院の抑制につながるという報告はあるものの死亡率低下に関するエビデンスはなく、ガイド下治療の明確な指針は示されなかった。
その後のメタ解析で、心不全再入院の抑制に加えて死亡率低下が示唆された1-4ことにより、2023年改訂版ではBNP
#24.
改訂の根拠となったエビデンス3)BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)の追記(1/3) 24 心不全診療においてBNP/NT-proBNP値に応じたガイド下治療が実際に予後を改善するかは個々の研究により結果は一貫していないが、最近のメタ解析では、死亡率の低下や心不全再入院の抑制が示唆されている23-26)。
急性心不全による入院患者では退院時のBNP/NT-proBNP値が入院時の30%以上低下(改善)していれば、退院後の予後(死亡や心不全の再入院などの心血管イベント)が良好であることが報告されている26)。
慢性心不全においては過去のBNP/NT-proBNP値を参照しつつ、個々の症例に最適なBNP/NT-proBNP値を見つけ、その値を目標として、定期的に測定をし心不全管理を行うべきである。前回に較べてBNPが40%以上、NT-proBNPが30%以上上昇した時には、心不全の増悪の可能性を考慮し、その原因を探索し、早期介入することが必要である2)(図3参照)。
心不全管理においてはBNP/NT-proBNP値を参考に最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療薬の強化を含めた適切な治療介入、生活習慣の是正(禁煙、断酒、減塩、食事や運動の適正化など)、多職種による介入などを含めた包括的な疾病管理が重要である。 (日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 本文より抜粋) 日本心不全学会 編. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版. 2023.http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/bnp20231017.pdf?20231026 (accessed Dec 2024)
#25.
改訂の根拠となったエビデンス3)BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)の追記(2/3) 25 Tsutsui H, et al. Eur J Heart Fail. 2023 ; 25 : 616.[COI]著者にベーリンガーインゲルハイムよりコンサルタント料等を受領している者が含まれる。 国際的なスタンダード(AHA/ACC/HFSA合同ステートメント)において、BNPでは40%程度、NT-proBNPでは25~30%程度の変動は一般的であるが、それを上回る変動がみられた場合、急性増悪の可能性を考慮した治療介入を行うことが推奨されている。 “ウェット”NP 左室充満圧の上昇
によるNPの変動 安定状態 うっ血の
悪化 “ドライ”NP 生物学的にみられる
NPの変動(誤差) NT-proBNPでは25~30%
BNPでは40% “ドライ”NP 入院治療 血行動態 救急治療の役割 ・診断精度の向上
・陰性的中率の向上
・診断時の迷いの縮減
・層別化およびトリアージ
・意思決定時間の短縮
・予後の把握 入院治療の役割 ・左室充満圧との関連性の確認
・静脈内治療に対する反応の経過観察
・血行動態の評価
・退院決定の指針提示
・予後の管理(再入院の減少) 退院後治療の役割 ・残留するうっ血の発見および特定
・うっ血緩和のための早期介入
・予後の管理(1週間、1ヵ月後) 急性増悪の
可能性を考慮
#26.
改訂の根拠となったエビデンス3)BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)の追記(3/3) 26 McLellan J, et al. BMJ Evid Based Med. 2020 ; 25 : 33. 18歳以上の慢性心不全患者を対象とした試験のメタ解析において、ガイド下治療により全死亡が87%に、心不全入院が80%に抑えられることが示唆されている。 全死亡 試験 リスク比、95%CI ガイド下治療群 非ガイド下治療群 心不全再入院 試験 リスク比、95%CI ガイド下治療群 非ガイド下治療群 【目的】心不全のナトリウム利尿ペプチド(NP)ガイド下治療が全死亡率と心不全による入院に及ぼす影響を明らかにする。【方法】8つのデータベースを用いて、2017年11月までに報告された18歳以上の慢性心不全患者におけるNPガイド下治療を臨床評価のみの治療と比較した無作為化対照比較試験を検索し、固定効果モデルによるメタアナリシスを行った。【リミテーション】すべての研究に対して解析を実施できていない可能性がある点、主要アウトカムについて解析できなかった研究がある点、研究数が少なく、出版バイアスが解析できていない点などに限界がある。